三日月先輩が目を閉じてごくんっと紅茶を飲んだ。

「顔上げて笑ってただろ」

「……。」

ここを出て行く新井くんと花音ちゃんはスッキリした明るい表情をしてた。

ずっと俯いてばっかだった新井くんも俯くことがなくて…


“ここは本当に悩みを持った人しか来れないから”

あ、もしかしてそれって…!?


「ここは下を見てる人しか見付けられねぇから」


そっか、そうゆう意味なんだ。

悩んでる人は下ばっか見てるからここにたどり着く、上を見てたらここには来られないし来ることもない。

「ね~、だから隠れてるつもりないのに隠れ部って言われるようになっちゃったんだよね~!」

飲み終わったあたしのティーカップに燎くんが紅茶を注いでくれた。
ティーポットが空になったのか外に出て洗いに行った、電気は通ってるけど水道は通ってないんだよねトリックスターは。

「真涼」

ぼぉーっと花音ちゃんたちのことを考えながらおかわりにもらった紅茶を見つめていたら名前を呼ばれて、ふと三日月先輩の方を見た。

目を合わせる、三日月先輩と。

なんだか慣れなくて、そんなふうに呼ばれるのは。

「お前はいつまでここにいるんだよ」

目を細めて眉間にしわを寄せる、それはいつも通りの三日月先輩だった。