「紅茶入れたよ、どうぞ~」

燎くんが紅茶を出した、新井くんに花音ちゃんに、そして三日月先輩に。

でも今そんな空気じゃなくない!?

「私お嬢様でいるのめんどくさいの!」

どんっ!と言わんばかりの視線で、新井くんもだけどあたしも戸惑っちゃった。

「なのに壮馬くんはお嬢様お嬢様って言うから、お嬢様の私が好きなのかなって!」

「オレは別にそんなっ」

「必死に振舞ってたの!嘘ついてたの!」

はぁはぁと肩で息をして、瞳を潤ませて。

「壮馬くんに嫌われたくて…っ」

今にも涙がこぼれそうだった。

「私牛丼大好きだよ…!!!」

あ、牛丼!ここで回収された牛丼…!!

「おいしかったの、初めて食べたから…壮馬くんの家で。すぐに好きになっちゃって、でも壮馬くんがごめんねって謝るから…」

花音ちゃんの目からぽろっと涙がこぼれた。

「私はうれしかったのに壮馬くんからしたらこれは違うんだって、私が好きだって言っちゃいけないものなんだって…」

「……。」

「壮馬くんの中の私はもっと華憐でおしとやかなお嬢様でいなくちゃいけないんだって、苦しかった…っ」

「花音…」

ぽろぽろ溢れていく涙を制服のスカートのポケットから取り出したキレイなハンカチで拭いた。その姿は華憐でおしとやかで、たぶんこれも本当の花音ちゃんなんだと思う。

「花音っ」