ドアの向こうから花音ちゃんが現れた。新井くんがビックリして立ち上がる。

「ごめんなさい壮馬くん…!」

今日もくるくる丁寧に巻かれた縦ロールを揺らしながら花音ちゃんが頭を下げた。

「花音…っ、じゃあやっぱり!」

「ううん、違うの!浮気とかそんなことはしてないよ、するわけないもん!」

「じゃあなんで今謝って…っ」

部屋中が独特な香りに包まれる。これはあれだ理事長にもらってっていう紅茶の香りだ。

「壮馬くんに言えてないことがあったの」

“2人の間に隠しごとはなしだよって”

新井くんと花音ちゃんの中で決めた約束はきっと2人でいるのが楽しかったからうれしかったから、自然とそんな関係になれたのかなって。

「ずっと隠して来た…壮馬くんの前で自分を作って来たの」

お互いに何でも話せる仲ってやっぱりあたしは憧れちゃうよ、それってすごくすてきなことだもん。

「私は海老名グループのお嬢様だから、お嬢様らしくしなきゃいけないこともあって…」

「それはわかってるよ、だから俺はそんな花音がっ」

「それが重かったの!」

花音の叫ぶような声が部屋に響く…


待って、花音ちゃんそんなこと思ってたの!?

え、あたしの考えてたことと違う!


隠れて牛丼行ってた話は!?