三日月先輩がチラシを拾って私の顔を見た。急に眉間にしわを寄せて目を細める。

「お前食い意地張り過ぎだろ!ポテトも食っといて!」

「ちっ、違います!配ってたからもらったんです、今から食べようとかしてないです!!」

ビラ配りのお兄さんがくれたんだもん!

決してあたしが物欲しそうな顔してたわけでもお腹空いてそうな雰囲気出してたわけじゃなくて、偶然お兄さんが…っ

「そういえば新井が言ってたな、海老名花音が牛丼喜んで食べてたって」

“だけど花音は美味しいねってよろこんでくれて”

あ、そんな話もあったかも。うれしそうに話してたよね、新井くん。

「言ってましたね、お嬢様でも牛丼をおいしいって感じるのは一緒なんですね」

普段きっとあたしとは全然違うものは食べてるだろうけど、おいしいものはおいしいって感じるのは変わらないんだって思ったもんね。なんかそれってうれしいよね、新井くんがあんな顔になっちゃうものわかる。

「これは駅前のあそこか…」

あごに手を当てて眉間にしわを寄せる三日月先輩は真剣にチラシを見てる。
何かそんなに気になるものでもあったのかな、牛丼好きなのかな三日月先輩も。

「牛丼半額…」

「えっ、半額なんですか!」