あ、やばっ 

大きな声で叫んじゃった!


あわてて口を手で覆ったけど三日月先輩にまたにらまれた。

「あ、やっぱこっちの名前のが有名かな?」

こてんっと首をかしげた深谷くんが次の言葉を言おうとした瞬間、すぅっと三日月先輩が息を吸った。一切表情を変えず、口だけが静かに動く…


「隠れ部」


しーんとしたこの空間に、三日月先輩の低い声が響いて。

「なんてダセぇ名前付けた覚えはねぇけどな」

ギュンッと力の入った目は今にもやられるかと思って、思わず逸らしちゃった。


怖いっ、目で刺されるかと思った…!


「あまりにも誰も見付けられないからそんな名前になっちゃったんだろうね~」

「うちにはトリックスターってハイセンスな名前があんだよ」

「もう少し宣伝する?」

「しねぇよ!隠れてやってんのがいいんだよ!」

……。

こんなわかりづらいところ見付けるのはすっごく大変だったし、ドアを開いて初めて誰がやってるのかを知ったぐらいだもんこの存在を知ってる人のが少ないと思う。

あたしだって噂で聞いただけで本当にあるとは思ってなかった。

しかも立派そうなソファーはあるけどそれ以外は学校の備品を寄せ集めたみたいな部屋…
棚にはたくさんの本が並んで、ホワイトボードや地球儀、顕微鏡まである。

そんでもって地下だから窓はなくて少し埃っぽいのに、ついてる間接照明は無駄におしゃれでいい雰囲気をかもし出してる。

三日月先輩が座るソファーの前には木製の低めのテーブルがあって、これは…

どこのやつだろ?
これも学校で見ないやつだなぁ、なんとなく高そうだし。


ここがあたしがずっと探してた生徒の悩みを解決してくれる生徒だけの探偵事務所、通称・隠れ部…

じゃなくてトリックスター、なの!?