「あの、三日月先輩…ありがとうございました」

ささっとたたんだ着ていた浴衣を抱きしめて、そろーっと脱衣所から出た。借りたTシャツも短パンも大きくて、そわそわして落ち着かない。

だって三日月先輩の匂いがする…


って何考えてるのあたし!


「あの服…っ」

「座れよ」

さっきまでソファーに座っていた三日月先輩が立ち上がってキッチンの方へ歩いて行った。

……。

これはまた怒られる?
何してんだって怒られる??

もしやこの先長くなるから食べ物とか飲み物を取りに…


これから座らされてお説教されるんだー…!

これは先に土下座でもなんでもっ


「休まないでいいのかよ」

謝らなきゃ!って振り返って三日月先輩の方を向こうとしたらそっと腕を引っ張られた。

優しく掴まれた腕に連れられるまま、トンッとふかふかのソファーの上に座った。

「ほら、これ」

「…ありがとうございます」

手渡されたのはペットボトルのスポーツドリンク…

えっと、これはもしかしてさっきキッチンで持って来たやつ?

「気分は?少しは落ち着いたか?」

ソファーに座るあたしの前にしゃがみ込んで、覗き込むようにあたしの顔を見て。

「水分取った方がいいぞ、あそこは暑かったからな」

……。

てっきり怒られるんだと思った。
怒鳴られて睨まれて怒られるだと思った。

「ゆっくり休んでいけよ」

そんな優しい声で言われるなんて思ってなかった。