逃げるように三日月先輩の前から走ってその場から離れた。

残り少なくなったポテトを握りしめて、カツカツと下駄を鳴らしながら、はぁはぁと息を切らして…


何これ、何してるのあたし…



なんで泣きそうになってるの?



「…っ」

込み上げてくる涙に耐えきれそうになくて、また怒られると思ったけど三日月先輩から逃げちゃった。


だってむかつくじゃんっ

あんなのむかつくじゃん…!


なんであたしがんな言い方…っ


あ、やばい涙が…
こぼれちゃう、下を向いたらこぼれちゃうのに…


「そこの牛丼屋でーす、割引券あるんでよかったらどうぞー!」

「……。」

すっっっごい空気読まないビラ配りのお兄さんだな、はいって目の前に出されたからつい条件反射で受取っちゃったじゃん。しかも牛丼って、どう見ても今牛丼食べそうじゃないでしょ。

そんながっつりしたもの食べそうじゃないでしょ。

てか片手にポテト持ってるっての。

あ、ポテト持ってるから牛丼もイケそうって思われた?

好きだけね、牛丼好きだけど…


「気持ち悪…」


うう~っと唸りながらしゃがみ込んだ。

あ、これやばい。
浴衣の帯締め過ぎたかも、浴衣なんて久しぶりだったから気合い入れて締め過ぎちゃった…

そんでもってポテト食べてここまで一気に走ったから、全部…


出そうでやばい。


いやいやいやいやっ

ここでそれはまずいでしょ!


やばいやばい、絶対ダメ!


お祭りから駆けて来たとは言っても、こんな駅前のこんなとこで…っ



「おい、真涼!大丈夫か!?」



手で口を押さえながらゆっくり顔を上げる、本当は声を出すのもしんどかったけど。

「三日月先輩…?」