スパッと切り捨てられるように三日月先輩が吐き捨てた。ひどく冷たい声で、むしむし暑い熱気を感じなくなるぐらい。

「それはお前の願望だ」

「…っ」

ドスッと胸を叩かれたみたいに、三日月先輩の低い声が刺さる。

「大事なのは証拠だ、理想だけで物事を語るな」

声だけじゃない、相変わらず冷たい視線で。

「証拠があって初めて答えが導けるんだよ、希望や願望なんて個人の思想に過ぎない」

淡々と話す三日月先輩の声は聞き取りやすいのに何も入って来なくて。

「論理的な思考が探偵には大事だ」

難しいんだもん、難しい言葉ばっかりであたしには理解できないことが多くてわかんないんだもん。

「それがお前はわかっていない」

そんなこと言われなくてもわかってるし、そんなことわざわざ言われなくてもー…

「わかんないし!あたし探偵じゃないしから!」

きゅっと手に力を入れる、グーにした手にぎゅーっと力を込めて叫ぶ。

「でもわかるもん、花音ちゃんのことはわかる!」

「はぁ?何言ってんだよ、お前友達でも何でもないだろ!?」

友達じゃないし、ちょっと喋ったことあるぐらいだし、それでもわかっちゃうんだもん。


だってー…


「恋する女の子のことはわかるよ…!!」