ウェルカム・トゥ・トリックスター

「は?燎とはぐれた?」

「………すみません」

燎くんどこいったんだろ~?
とキョロキョロしながら屋台が並ぶお祭りの中を足早に歩いていたら先に三日月先輩に遭遇した。

しかもめっちゃ眉間にしわ寄せてる、すっごいけげんそうな顔で見られてる。
別にあたしが悪いわけじゃにのに謝っちゃったじゃん。

「何してんだよ、どんだけ人いると思ってんだ」

「……。」

「遊びに来たわけじゃねーんだよ、仕事だぞ!仕事!依頼人から受けた相談なんだよっ」

そんなのあたしもわかってるもんーーーーー!

てゆーかなんであたしがこんなことまでしなきゃいけないの!?

ちょっと聞いちゃっただけじゃん、そりゃプライバシーとかあるけどさーっ!

「…はい、すみません」

なんて言えるはずもなく、ぺこりと頭を下げた。

燎くん早く戻って来て!お願い早く!!

三日月先輩と2人じゃ間が持たない…!

「はぁ」

タメ息つかれたし!
タメ息つきたいのはこっちなんだけどっ

「まだ何の証拠も掴めてないんだよっ」

屋台の並ぶ裏っかわ、表通りとは違ってあまり人がいない。電気も少なくてちょっと暗いし、風通しは悪くて暑いし。

「どうすっかな~、まだ情報が少な過ぎるんだよな。これだっていう確証は得られてねぇし…」

三日月先輩が持っていたペットボトルのお茶をごくんっと飲んだ。またはぁっと息を吐いて、顔をゆがませて。

「何を隠してるんだ海老名花音は」

ガヤガヤと賑わう屋台の人ごみに向かってうんざりした表情を見せるから、思わず口に出してしまった。

「花音ちゃんは浮気してないです」