ウェルカム・トゥ・トリックスター

「うん、彼氏の新井壮馬くん!」

この瞬間、感じちゃったことがあって。

トーンの少し上がった声に、恥ずかしそうに頬を染めながらもうれしそうに笑ったから…


好きなんだなぁって思っちゃった。

新井くんのことすごくすごく、そんな顔をしてた。


「じゃあ…今日は“2人”でデートなんだ?」

「うん、初めてなんだよね…お祭りデートするの」

花音ちゃんが少し見上げるように新井くんの方を見る、そしたら新井くんも頬を染めて恥ずかしそうに頷いた。

見つめ合って微笑んで、絡ませるように手を繋いで、こんなのどっからどう見てもしあわせそうなカップルで…


超うらやましいんですけど。


「あ、真涼ちゃんの彼は?…」

「あーっ、今はぐれちゃって!人多いから迷子かな!?ちょっと探して来るね!」

あんまり長く喋ってるとボロが出る!

その前に早くここから…じゃあねと手を振って駆け出そうとした。

「早く見付かるといいね!」

そしたら花音ちゃんがあたしの背中に向かって叫んだから。

「うん、ありがとう!」

嘘ついちゃったことにちょっとだけごめんねって思った。


だって花音ちゃんの言葉に嘘は感じなくて、本当の気持ちを感じたからー…