隣からスッと声が聞こえた。

え、この声は…

このぶっきらぼうで愛想のない声は…


「三日月先輩!!?」


あ、やば大きな声出しちゃった。

でもまぁいいか、ここグラウンドだし外だし。

「泣くほど嫌ならわざわざ自分から別れるなんて選択肢作らなくていいだろ」

「……。」

一段下の階段に足を下して、膝の上で肘を立てて頬杖をつく。グラウンドの奥で走り込むサッカー部を眺めるみたいに遠くを見た。

「…それは、よくないじゃないですか!だってあたしのわがままっていうか、あたしがわざとそうしたっていうか…」

「それはそれ、これはこれだろ?利用しときゃよかったのに」

「…めちゃくちゃなこと言いますね」

利用だなんて、あんまりいい言葉じゃないじゃん。

それなのに…

「誰にだって何をしてでもほしいもんってあるだろ」

そんなこと言うから、遠くを見つめて相変わらず表情筋は仕事してないけど。

「三日月先輩にもあるんですか?…何をしてでもほしいものが」

「さあな」

「なんですかそれ」

ケッて息吐かれたんだけど。


しかもその目、怖すぎ!

そんな雰囲気だったから聞いてみたのに!


…でも。