ウェルカム・トゥ・トリックスター

「でもわかってました、こんなことしても意味はないってわかってました」

声がもう上手く出せない。
鼻をすすって、小刻みに息をするように。

「だって何をしても智くんの気持ちは変えられなくて、智くんはあたしのことなんか好きじゃないんですもん！」

それはただ可哀そうなあたしをなぐさめてくれるだけ、それだけなの。


智くんは昔からそうだから、そんな人だから。


付き合ってくれてるのも優しさなの。

あたしに頼まれて断れないだけ…


雨花先輩のこと利用してこんなことまでしたのに、智くんの優しささえ利用したの。


「ごめんなさい、三日月先輩…っ」

「……。」

あぁ、もうぐちゃぐちゃになっちゃった。

こんなことしちゃダメだったんだよ最初から、全部全部あたしが悪かったんだよ。


でも涙が止まらないの。

次から次へと涙がこぼれてくるの、ずるいあたしなのに。


こんなあたしを、誰も救ってはくれないよ。


もうやめよう、終わりにしないと…



ばいばいをしなきゃ。