ウェルカム・トゥ・トリックスター

今日は天気がいい。

雨なんて1ミリも降ってない。


どーせならどしゃ降りの雨がよかった。


「ずっとずっと智くんのことが好きだったんです…」


いつからだったかな?

家がお隣さんだったから子供の頃からよく遊んでた。


「三日月先輩が言ってた通りです、あたしの片思いだったんです」

優しい智くんは同い年なのにあたしのことを妹みたいにめんどうみてくれて、おもちゃは絶対譲ってくれるしお菓子は半分にしたら大きい方をくれるような人で。

あたしが困っていたら手を引いてくれるし、あたしがさみしい思いをしていたら微笑みかけてくれる…


そんな智くんのことが大好きだった。


「だから…」


智くんがほしかった。

あたしのものにしたかった。


「雨花先輩を利用して智くんの気を引こうと思ったんです」

瞳が熱くなる。
鼻の奥がつんとして痛い。

どうして雨は降っていてくれないの?

そしたらじんじんと刺さる胸の鼓動を誤魔化せたのに。

「それでわざと手紙を?」

「はい…、だって雨花先輩なにもしてこないんですもん!ただ見てるだけで話しかけてもこないし、それじゃあちょっとつまんないかなって…」

それで手紙を自分で仕込んだの。
ストーカーっぽく見せるために、ストーカーされてるってわかりやすく見せるために…


あれはあたしが自分で用意した手紙だよ。