ウェルカム・トゥ・トリックスター

「そんなわけ…ないじゃないですか、びっくりしましたよ!怖かったですよ!でも慣れちゃって、何通も来るから…」

声が小さくなる、どんどん上を見られなくなる。

三日月先輩はあたしを見てるのに。

「普通は慣れるより恐怖が増すものだ、差出人のない手紙が何通も来たら」

下ばっかりを見て、ぎゅぅっと手を握りしめて。

「そんなのわかんないじゃないですか、それが日常になったら別に…」

「日常だったんだろうなぁ」

「そうですよ!日常だったんで…っ」

「真涼がお香を焚くのが」

え…

あたしがお香を焚くのが…?

思わず顔を上げてしまった。どうしてそんなことを言うのかわからなくて。

「紙は匂いの吸収が良くて、毎日焚くお香みたいなものは移りやすいんだよ。普段使ってる奴には当たり前でわかんねぇだろうけどな」

それはどうゆう意味?何が言いたいの?

「あの手紙からはかすかに香った、バニラの香りが」

“甘い匂いがする”

それはあたしの好きな香り、毎日焚いてるお香の香り…

アイスクリームみたいな甘い香りがするお気に入りのお香。


「それが真涼が自宅から手紙を持って来たという証拠だ」