「一応見張っといてよかったぜ」

しかめっ面をした三日月先輩が階段を見上げる。

見張っといてって、どうゆうこと…?

「オレたち真涼ちゃんのことこっそり見てたの、やっぱりちょっと気になって…ごめんね?もう依頼はしないって言ったのに」

燎くんが手を合わせて首をかしげた。
 

それってずっと?
ずっとあたしのこと見てたの?


もういいってあたしからいらないって言ったのに、あたしのこと見守ってくれてたの…?


「真涼ちゃん大丈夫!?」

雨花先輩が階段を下りて来た、あたしを見ながら。

少しだけ震えた、すっと視線を落としちゃった。

タタタッと駆け下りてぺたんと座ったあたしの前にしゃがみ込む、雨花先輩の前にサッと燎くんさえぎるように入り込んだ。

燎くんの背中の後ろ、隠れるみたいに小さくなる。

でもさらに前にスッと…


「燎いいよ、俺が話す」


パンパンと手をはたきながら、たまに痛そうな顔をしながらゆっくり三日月先輩が立ち上がった。

「蔵井雨花、少し調べさせてもらった」

雨花先輩の方にあの鋭い視線を飛ばして。
こんな時、いつも怖いと思ってた三日月先輩の視線は心強くて安心する。

「お前、クラスでいじめを受けてるらしいな」

「…っ」

本当に、調べてくれたんだ。
突き放したのに、もういらないって言ったのにあたし…

「中学に入ってから友達もいないようだけど…」

ギロッとにらむ三日月先輩を前に、階段の踊り場で立ち尽くす雨花先輩は怯えた表情を見せた。

「いじめはもちろん、いかなる理由があってもいじめる側が悪い。だけどいじめられてた奴が同じことをしていいわけじゃない」

さらに眼力を込めてにらみつける、眉を吊り上げて刺すような瞳で。

「自分がいじめられてるからって関係ない真涼に手を出すのか!!」