夜。
 王宮の高台で、ふたりは空を見上げていた。

 風に舞う星の光。
 静かな時間。

 

「……これから、きっといろんな困難がある」

「ええ。でも、それでも──あなたとなら、越えていけるわ」

 

 カイルはリシェルの肩を抱き寄せ、
 彼女の耳元で、そっと囁いた。

 

「俺の王妃。……いつか子どもたちにも、伝えよう。
 この国がどんな風に変わったのか、君がどれだけ強かったかを」

「……ふふ、やめてよ。照れるわ」

「いいだろ? 君の物語は、もう“悪役”なんかじゃない。
 これは、王妃リシェルの、“英雄譚”なんだから」

 

 星が、静かに瞬いた。
 その光は、ふたりの未来を祝福するように輝いていた。