式典が終わった後、ふたりは静かにバルコニーに立ち、
 王都の民衆へと顔を見せた。

 空には祝砲が上がり、紙吹雪が舞う。

 

「これが……王としての世界」

「ええ。そして、あなたと私の新しい物語の始まり」

 

 カイルが彼女を見つめる目は、何よりも優しく、力強かった。

 

「もう、契約なんて言葉はいらない。
 俺は、おまえを心から愛している」

「……私も。あなたを、心の底から、愛してるわ」

 

 再び交わされたキスは、誓いよりも強く、未来よりも温かく、
 ただふたりの“想い”だけが、確かにそこに存在していた。