その後──
 王に提出された文書と証言により、ユリウスの“正統性”は取り下げられ、
 王位継承権はカイルに正式に移されることとなった。

 セシリアは国外追放。
 ユリウスは自ら王宮を去り、静かな生活を望んだという。

 混乱はあった。
 けれど、その中でも人々は、第二王子とその婚約者の姿に救われていた。

 ──互いを信じ、手を取り合い、どんな陰謀にも負けなかったふたり。

 

「……リシェル。改めて、言わせてくれ」

「なに?」

「“契約”でも、“義務”でもない。
 俺は君を、王妃にしたい。……未来の王と共に、歩んでくれ」

 

 リシェルの瞳に涙がにじむ。

 

「はい。あなたの王妃として──この国と、あなたの隣を、生き抜きます」

 

 そう誓った二人の手は、どこまでも固く、結ばれていた。