王宮の東翼、地下にある古文書庫は、ふだんは誰も近づかない静寂の空間。
 リシェルは手紙に記されていた鍵を使い、扉を開けた。

 そこには、膨大な王家の記録と出生証明書の写しが保管されていた。
 その中に、確かにあった──

 

「……これ……!」

 

 《第一王子ユリウス・ヴァレンティウス──母、ソフィア・エルシード。
 立場:側室。出産日:王妃の出産日と一致せず。》

 それは、王家の血統の正当性を揺るがす決定的な証だった。

 だが──

 

「ようやく、見つけましたね。姉様」