──王位を巡る陰謀と、愛を貫く決意





 第二王子・カイルと伯爵令嬢・リシェルの正式な婚約発表から数日。
 王宮は、まるで表面上の祝福の裏に炎を隠すように、
 緊張に満ちた空気を纏っていた。

 なぜなら、カイルの婚約発表は──
 王位継承を巡る動乱の引き金となる可能性を孕んでいたからだ。

 

「兄が黙っているとは思えない。……必ず、次の手を打ってくる」

 

 そうカイルが呟いたのは、王宮の謁見の間を出た直後だった。
 王太子である第一王子・ユリウスは、正式な後継者とされていた。
 だが、王の老いが進む中、継承問題が表に出るのは時間の問題だった。