彼女の中で目覚めた異能《真実を紡ぐ組紐(トゥルース・コード)》は、
“心の結びつき”を可視化し、偽りを断ち切る力を持っていた。
ある日、離宮にひとつの知らせが届いた。
「第二王子殿下、正式な婚約発表を“次の祝賀式典”で行うよう、王からご命令です」
その知らせに、リシェルの背筋が震えた。
──「形式」ではない。
これは、“本物”の婚約発表。王家の儀礼としての、不可逆な誓約だった。
逃げ場はない。
そして、それは彼女にとって、大きすぎる“選択”を意味していた。
「私たちの契約……本当に、このまま“終わらせて”いいの?」
リシェルは一人、庭園のベンチに腰掛け、青空を仰いだ。
緑の風が髪を撫で、遠くで鳥の声が聞こえる。
ふいに背後から、カイルの影が差した。



