──“契約”という仮面を脱ぎ捨て、心で結ばれる日





 王宮の政争は、静かに、けれど確実に熱を帯びていた。
 第二王子カイルと伯爵令嬢リシェル──“契約”のはずだったふたりの婚約は、
 今や王族内部の勢力争いの中心にある。

 形式上の契約とはいえ、王家の婚約にしてはあまりに進展が早すぎた。
 故に、周囲の貴族たちはざわめき、
 第一王子ユリウス派の貴族たちは、あらゆる手段でリシェルを排除しようとしていた。

 毒、陰謀、誘拐の未遂。
 ──だが、それらをすべて防いだのは、カイルの剣と、リシェルの“力”だった。