「……あなたは、本当に。どうして……」
「君が生きていてくれて、嬉しかったんだ。
それだけじゃ、いけないか?」
リシェルは涙をこぼしそうになるのを、必死に堪えた。
契約だったはずの関係。
利用されるのが常だった人生。
でも今、彼の言葉が、心に確かに触れた。
「いけなくなんて……ない。
……でも、もしも私が、この関係を“契約”じゃなくしたいと言ったら?」
「その時は、指輪を贈ろう。
本当の、婚約者としての──ね」
それは、約束のような、未来のような言葉だった。
まだ、形にはならない。
でも確かに、そこに“始まり”があった。



