王宮本殿、南棟の晩餐室。
大理石と金のアーチが続く宮殿の一角には、王子たちと数名の貴族だけが招かれていた。
主賓席には、ユリウスが美しく着飾って座っていた。
その隣に、微笑むセシリア。
まるで「王子と妃」のような並びだった。
「ようこそ、弟君。……そして、リシェル嬢」
ユリウスは柔らかく笑って見せる。
だがその声には、どこか棘があった。
「君たちの“婚約”の報を聞いて、ぜひ祝福をと思ってね。
……まさか、君が誰かと婚約するとは思ってもいなかったが」
明らかな挑発。
けれど、リシェルは微笑を崩さなかった。
「私も思っていませんでした。
まさか、あなたがここまで“身内の行動”にご興味があるとは」



