──運命を覆す剣は、偽りの契約を超えて




 静養の名目で離宮に滞在していたリシェルとカイルに、王宮からの招待状が届いた。
 差出人は第一王子・ユリウス・ヴァレンティウス。
 内容は「王家の親睦を深める食事会」とのことだったが、
 リシェルは一読しただけで悟る。

 

「これは“罠”ね。あの人が、わざわざ私たちを食事に招くなんて」

 

 ユリウス──第一王子は、社交界では“黄金の貴公子”と称される美貌の持ち主で、
 その仮面の裏には、冷酷で計算高い本性を秘めている。

 前世ではセシリアと共に、リシェルを“悪役令嬢”に仕立て上げ、
 毒を盛った元凶として裏で糸を引いていた。

 

「けれど、逃げるわけにはいかない。私が、弱くなったと思われたら……」

「……俺も行く。君を一人で行かせるわけにはいかない」

 

 カイルは静かにそう告げた。
 その瞳には、すでに“剣士”の覚悟が宿っていた。