後日──
 刺客は自害したものとされ、事件は幕引きされた。
 だが、リシェルとカイルの間では違っていた。

 

「君の中に、力があることは……最初から気づいていた」

「なぜ黙っていたの?」

「君がその力を“選ぶ”まで、他人が口を出すべきことではないと思ったからだ」

 

 そう言って微笑んだ彼は、確かに、前世で出会ったことのないカイルだった。
 氷の仮面の奥に、“熱”が灯っていた。

 

 「俺が守る。契約だとしても、関係ない」
 「もう誰にも、君を傷つけさせない」

 

 その誓いが、彼女の胸に優しく降り積もった。
 それは、偽りの婚約に芽生えた、**初めての“本物”**だった。