あなたがいないと、息もできなかった。




 透真は、しばらく会社を休職した。
 倒れたこともあって、父から「少し距離を置け」と言われたからだ。

 代わりに通い出したのは、大学時代の恩師が経営する中小企業向けの経営塾だった。

 そこで、透真は初めて「守ることの暴力性」について知る。

「自分が“正しい”と信じて守ってるつもりでも、それってただの自己満足かもしれないんだよ」

「相手が息できないくらい近くにいて、“お前のためだ”って言い続けたら、それはもう支配だよ」

 刺さった。

 あの頃の自分が、まさにそれだった。
 奏音を想い、気遣い、尽くしていたつもりだった。
 でも──「君のため」と言いながら、彼女の自由を縛っていた。

 透真は、ふと膝を抱えて座り込むような気持ちになった。

 ──俺は、彼女の何だったんだろう。

 ヒーローぶっていたただの依存者。
 彼女を救いたいという欲にすがって、すべてを埋めようとしていた。