恋とバグは仕様です。 ~営業スマイルで喧嘩して、恋に落ちるまで~





02|「優しくされると、困るの」

 その日の夜。

 凛はついに、飲み会帰りにビールの勢いで遥人にLINEを送ってしまった。

【凛】ねぇ、今から電話していい?

 ……5秒で既読。10秒後、着信が鳴る。

「……飲んだな」

「飲んでない」

「嘘つけ、声でわかる」

「うるさいな……。ねぇ、朝倉さん」

「ん?」

「なんで、最近またよそよそしいの?」

 沈黙。夜の空気が携帯越しに重くなる。

「……お前のこと、好きになりかけてるからだよ」

「は?」

「中途半端に触ったら、お前が壊れそうで、怖いんだよ」

「……はぁ?」

「俺が優しくするのって、きっとお前にとって迷惑なんだろ?」

「……そんなこと、」

 言いかけて、飲み込む。

「……そういうの、ちゃんと言ってくれなきゃ、わかんないよ」

「言ったら、全部壊れそうだった」

「──私、営業スマイルは得意だけど、恋愛は、バグだらけだから」

 電話越しの空気が、静かに揺れる。

「だから、優しくされると、困るの」

 その夜、どちらからともなく通話は切れた。
 言葉を選ぶほど、想いが複雑になることを知った夜だった。