殺せなくなるまで殺していたい彼からすれば、殺す人間を探す手間が一つ省けるのはありがたいことである。その分、カナデが金を騙し取るまで待たなければならないが、冷却期間をしっかり設けることができると考えればメリットとなる。既に返事は決まっている。彼は息を吸った。

「構いません」

「良かったです。ミコトさんと今後も繋がっていられますね。ミコトさん用に買ったカフェオレのスティックも、無事に減ってくれそうです」

「あれから飲んでないんですか」

「ミコトさんのですから飲むわけないですよ。まだ一本しか減ってません」

 彼のために買ったというカフェオレのスティックを、カナデが飲むことは決してないだろう。彼が飲まなければ一生減らないが、少なくなったらなったで補充をしそうであった。カナデの部屋に常備されてしまいそうだと思ったが、思うだけである。カナデが勝手にし始めたことだ。彼は一つも頼んでいない。

「すみません、これからもミコトさんと関係を続けられると思って安心したら、急にトイレに行きたくなってしまいました。ちょっと行ってきます」

 彼に一言断ったカナデが立ち上がる。トイレの前には、ということが頭から完全に抜け落ちているのか、カナデはあまりにも普通すぎていた。

 用を足すために彼の後ろを通ってリビングを出た直後、あ、とそれを見てようやく思い出したようにカナデは声を上げた。

「トイレの前に金蔓の死体があること、すっかり忘れてました」

「やっぱり忘れてましたか」

「ミコトさんの前で恥ずかしいですね」

「全然恥ずかしがっているようには見えませんが」

 あっけらかんと会話を繰り広げる二人の中に、後ろめたさは微塵もなかった。

 人の命を奪っても、人の金を奪っても、良心の呵責に苛まれることのない極悪非道な彼らの夜は、長かった。



END