その名前呼びは、反則。

傷ついて大学の教室を飛び出した私を桐谷くんは追いかけて来なかった。

別に追いかけて来なくても、メッセージで連絡してくれたり、翌日話しかけてくれても良かった。

それでもそれもなくて。

大学卒業と同時に今度は私から逃げてしまった。

連絡先を消せば、お互いの家すら知らないのだからすぐに縁は切れた。

それから三年、やっと思い出に出来ていると信じていたのに。

今日桐谷くんに会った時の動揺はとても思い出に出来ている人の反応ではないだろう。