それから、桐谷くんは私がどれだけ素で話しても普通に話してくれた。

「そうだね」とか「知らない」とか一言しか話さなくても、ずっと隣で話してくれた。

だから安心しきっていた。

この人は私を傷つけることを言わないと。

でもそれは違った。

卒業間際、本当になんでもない時。

会話の流れとかじゃない、突然こう言われた。


「琴ちゃんって不器用だよね」


すぐに傷ついた訳でも逃げた訳でもない。

だって桐谷くんを信頼していたから。

なのに「どういう意味?」って聞いた私に桐谷くんは「そのままの意味」と返した。