心臓がドクドク煩く響いていて、本当に自分は馬鹿だなと思う。

それでもあの頃ほど馬鹿じゃない。

帰りは定時になったらすぐに帰って、人気(ひとけ)の少ない出入り口から帰れば良いだけ。

そう分かっているのに、まだ身体全体が緊張している。

あの頃のまま桐谷くんが現れた。

それだけで私の心を乱すには十分だった。