なんでいるの、なんでいるの、と頭の中がこんがらがりそうになるのを止まるように別の課の社員が説明してくれる。

「桐谷さんは取引先でいつも対応してくれる子で。今日は僕が行けないから桐谷さんが来てくれたんです」

その社員の(ほが)らかな顔から桐谷くんへの印象が良いことが伝わってくる。

私とは大違いなのは昔から変わっていないらしい。

卒業してから一方的に連絡先も全部消した。

それなのに怒りもせずに「琴ちゃん」と声をかけてくるのはまさに桐谷くんだった。

「会議室に案内しますね」と言われて、桐谷くんは何故か私に「仕事帰り会おう」と耳元で呟いて行ってしまう。