その名前呼びは、反則。

「ごめっ……ん、なさいっ……!」

「良いよ。代わりにこれからずっと一緒にいて」

桐谷くんはそう言って何故か席ほど私が出てきた出入り口を指差した。




「本当は琴ちゃんならこっちの出入り口から来るって分かっていた。直帰も嘘。時間休を取ったんだ」




そう言って桐谷くんは子供みたいに笑った。




「奇跡も運命もそんな簡単に起きない。俺が琴ちゃんを好きなだけで、三年経っても諦められなかっただけ。運命も好きな人も自力で頑張らずに手に入るものじゃない」




桐谷くんが私の手を握った。



「だから、いま両思いになった奇跡を大切にしたい。俺だって三年勇気を出せなかったんだ。もう絶対離したくない」


「私も、もう逃げたくない」



泣きながらそう言い切った私を桐谷くんが抱きしめてくれる。