その名前呼びは、反則。

「しかもなんでこんな早くから待っているの……!」

「直帰して良いって上司から言われて……」

桐谷くんはなんでこんなことを聞かれているのか分からないようだった。

それでも逃げることが裏目に出るなんて思わなかった。

まるでこの運命から逃げるなと言われているように感じていまう。


「ていうかなんで桐谷くん? 前は成樹(なるき)くんって呼んでいたじゃん」


「呼んだことないでしょ!」


キツく言い返したのに、桐谷くんはいつも通り「あはは、冗談」と笑っている。

私の言葉とかに悪い意味がないって知ってくれているような、その反応が大好きだった。