いつか「ほんと」になれたら



「心配、してくれるんだね」

 でも、私には分かる。
 切実なその声は、燐人さんを探している。

 態度は変わってしまっても、今でもその人の本質は変わらないと思ってしまう。だからこそ、かつての面影を追い求める。 
 いつだったか、そういう話を聞いたことがある。

  
「とにかく!わたしのことは心配しなくて大丈夫だから!!」


 投げやりな叫びも、心配して欲しいという願望の裏返し。この会話を聞く限りでは、燐人さんも咲凜ちゃんもお互いを大好きなように見えた。
 もちろん、兄妹としてね?

   
「あーあ、仲直りできなかったぁ…」

 だからきっと、大丈夫。

 
 なぜなら──、
 
「お姉ちゃーん、ただいま!」
「みぃちゃん!!! おかえり!!!!」

 ガチャリ、と鍵が空いた音がして、みぃちゃんこと水月(みずき)が帰ってきた。勢いよく飛び出して、玄関まで迎えに行く。

 後ろで艾葉が苦笑いしていたが、そんなの関係ない。妹を愛でて何が悪い。
 
「久しぶりにお姉ちゃんのお汁粉食べたいな…」
「分かった! 今すぐ作ってくる!!」


 すごく良いことを言っていたはずなのに、一瞬で空気が霧散する。

 あれ?…さっきまで何言ってたんだっけ?


 まぁ、いい。
 私の周りはみんな兄姉弟妹大好き(シスコンとか色々)が集まっている、とかそういう内容じゃない?

 
 私、花苑純恋は今日も姉妹に囲まれて、世界で1番幸せです!