いつか「ほんと」になれたら



「……エリック」

 
 前に保育園の先生が聞かせてくれた童話に出てくる、主人公の名前だ。

 最初は村中から愛されるただの好青年だったが、なぜか王宮の人たちからの信頼を次々に得ていき、最後にはお姫様に見初められ結婚している。

 
 男性版シンデレラが存在するなら、たぶんこんな感じなんだろうなと思う。もしくはRPGゲームの勇者。



「あなたのなまえは、エリック!」

  
 どこかのアニメ映画のクライマックスにありそうなセリフだが、そんな事はどうでもいい。
 
 今大事なのは、王子様の名前がエリックだと決まったことだった。
 

 後につけた苗字も合わせれば、エリック・スノー。
 
 スノーは、わたしの苗字の白雪から取った。

 
 名前といい、苗字といい、わたしの名前がふんだんに使われている事実は、見なかったことにしておく。
 
 絵本とはいえ、わたしの王子様だし!
 わたしはエリックのこと、大好きだし!
 

 たぶん彼だって、苦笑しながら許してくれると思う。
 
 …それ、本心から許されてるのかな?


 まぁいっか。
 
「よろしくね、エリック」


 この前の誕生日会と同様、絵本の表紙をじっくりと見つめると、またもやエリックと目が合った。

 やっぱりこれ、気のせいなんかじゃない。