いつか「ほんと」になれたら

 わたしが花苑家で過ごすようになってから、2日目の夜。
 いつも通り晩ごはんを頂いていると、廊下にある電話がけたたましく音を立てた。

「ごめんね、咲凜ちゃん。今、喉に魚の骨が刺さっちゃって手が離せないから、電話出てきてくれる?」
「え、大丈夫ですか?」
「うん……。私のことはいいから、電話をお願い」
「わ、分かりました」

 純恋さん……。慌てて食べたの?
 確かに今日の晩ごはんの魚は骨が多かったけど、本当に大丈夫だろうか。

 
 純恋さんのことが心配だったけど、艾葉ちゃんがこの場は引き受けてくれそうなので、わたしは電話に出ることにした。
 花苑家の電話は留守電がないそうなので、切れる前に出ないと。
 
 
「純恋さん…。気をつけてっていつも言ってるじゃん!体に障るよ?」
「私は老人か」
 
 受話器を持ち上げて、深呼吸する。誰だろう。なんだか、嫌な予感がする。

「はい、花苑です」
「……咲凜?」

 戸惑ったようにわたしの名前を呼ぶ、その声にはひどく聞き覚えがある。
 
「燐人くん?」
「ん、そうだよ」
「どうして…?」