いつか「ほんと」になれたら

「ぜっったいそうだよ! 嫌いだったら勉強なんて教えないと思う」
「だったら、なおさら辛いよ。嫌いじゃないなら、どうして燐人くんはわたしを避けるの?」

 芽蕗ちゃんが、心の底からそう思ってくれているのは伝わっている。
 でも、わたしはそうは思えない。

 だって、燐人くんはわたしを避けるし、冷たい態度を取ってくる。これで嫌われていないなら奇跡だ。
 仮に大事な妹だと思っていてくれるんだったら、せめておかえりくらいは言って欲しい。
 
「それは…私も分からない」
「もう逃げ出しちゃいたいな……。あの家にこのままいたら、おかしくなる気がするの」

 家に帰っても寂しくて、そのくせ時々心配してくる。わたしのことを気にしてくれてるのか分からなくなって、いつも心の中はぐちゃぐちゃだ。
 そして、エリックとも会えないから、やり場のない感情は日々増えていくばかり。もちろん、今回みたいに艾葉ちゃんや芽蕗ちゃんに相談することも出来る。でも、2人とも行動力が高いから、わたしの話によって2人が何か始めないか不安なのだ。

 人に言われて仲良くしてもらうのと、自力で仲直りするのとでは大きく違う。
 
「じゃあ……、逃げる?」
「え?」