事情が事情なので少し複雑な気持ちはあるけど、学年の中でも成績上位者の艾葉ちゃんに褒めてもらえたならいいかなと思える。
小学生の頃に仲良くなった艾葉ちゃんは、今でも親友と呼べる存在のひとりだ。
「なんか勉強法とか変えたの〜?」
「実はね…」
もうひとりの親友である芽蕗ちゃんに、そう尋ねられて、わたしはこれまでの経緯も全て話した。
中学に入ってから、エリックと話せる時間がなくなったことから、燐人くんに冷たくされることまで全部。
これまで、誰にも言えなかった数年分の悩みを、ようやく言葉にすることができた。
「そっか…。大変だったね」
わたしの話を聞き終えた艾葉ちゃんが大きく息を吐く。既にエリックの存在についても話してあった2人が、こうして燐人くんのことも相談に乗ってくれるのは本当に心強い。
「えー、うちは燐人先輩はそんな人に見えないけどなぁ…」
「芽蕗、ちょっと言葉が足りないと思うよ」
「あ、ごめんごめん」
芽蕗ちゃんは、どうやら燐人くんと仲も良いらしく先輩呼びをしている。
わたしには冷たい態度を取っているけど、芽蕗ちゃんに対しては何か違ったりするのだろうか。
「もちろん、えみりーのことは信じてるよ?ただ、燐人先輩がえみりーのこと嫌いだとは思えなかったってだけだから」
「そう、なのかな」
「ぜっったいそうだよ!」
わたしのこと嫌いじゃないなら、どうして避けるの。
どうして「おかえり」のひとことすら言ってくれないの。
そんな疑問が募るばかりで、いつもなら心強い芽蕗ちゃんの言葉も、今のわたしには響かなかった。



