本当は、2人だとすごく静かになってしまって気まずい。
でも、この場で自分の気持ちを正直に話すことで彼を傷つけるよりはいいのかな、なんて思ってしまう。
「ほら、早く」
「う、うん」
横目で盗み見た燐人くんの横顔に、かつてわたしを助けてくれた時の面影はない。
少し冷たい震えた手で、それでもわたしの手を引いてくれた。
どれだけ冷たくされたって、その事実はわたしの中で消えることはない。あの日の優しかった燐人くんの記憶が残っているから、わたしは今もその笑顔を探してしまうんだろう。
勉強を教えてくれなくてもいいから、昔みたいに仲良くしたい。
そんな子供じみた願いを断ち切るように、わたしは問題集のページを開く。
あぁ、このままの日々が続くなら、いっそのこと逃げてしまいたい。



