いつか「ほんと」になれたら


「……もう一度、魔法を探してみよう」


 2年前に探しても見つけられなかったけど、でもそんなことは気にしないことにした。
 あるはずもない魔法に縋ってしまうくらいには、咲凜に会いたい。


 絶対に咲凜のところに行く。
 
 前回魔法を見つけられなかったことで、揺らいでいた僕の決心が、ようやく固まった時だった。


◇◇◇

 
 そうして僕が最初に向かったのは、弟たちの元だった。

「あのさ、今ちょっといいかな?」
「はい、兄上」

 この世界は、全て絵本の内容に基づいて作られている。つまり僕よりも1人目の弟の方が魔法は上手いし、2人目の弟の方が書類処理能力も高い。
 
 前回、どう考えても優秀な弟2人の力を借りることを思いつけなかったのは、もしかして絵本の記述が変わったからだろうか。
 この前見た時にあった、最後の1文はおそらく、どこかのタイミングで付け足されたものだと思う。それこそ“偉い神様”の仕業かもしれないし。


「異世界に行く魔法って知らない?」