いつか「ほんと」になれたら

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 僕を勇者に選んだ偉い神様とやらは、本当にふざけていると思う。


 だって絵本に出てきた、僕の友達だという騎士は魔法にも長けていたはずだ。

 もちろん、剣が専門の彼よりは僕の方が魔法の扱いは上手い。それは否定しないけど…。
 ならばその騎士と弟を勇者に選べば良かったんじゃないのか。

 2人とも、国の利益のためなら多少手段を選ばないところがあるし、それぞれの道に長けた者同士分かり合えることも多いと思う。

 
 心の中では色々なことを考えてしまうが、僕も国を大切に思っていることに変わりはない。
 選ばれてしまった以上、他にどうすることも出来ないし、とにかく僕は旅に出た。
  

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 野を越え山を越えて、たくさんの敵と戦って、王子様は怪物の住むという村までやってきました。

 その村は、昔は人が住んでいましたが、いつのまにか怪物に乗っ取られてしまっていたのです。

 それから、王子様と怪物の長い長い戦いが始まりました。王子様が魔法を出せば、怪物も魔法で攻撃してきます。

 王子様は朝も昼も夜も、ずっと戦い続けました。
 何日も寝ないで必死に剣を振って、魔法を出しました。
 
 そして、王子様はついに怪物を倒しました。
 1番にはなれなくても、剣も魔法もじょうずだった王子様だからこそできたことでした。

 王子様が国に帰ると、世界中のみんなが喜んでくれました。特に怪物の住む村の近くにある国の王様は、泣きながら喜びました。

 王子様はその国の王女様と結婚して、末永く幸せに暮らしたそうです。

 めでたしめでたし。