いつか「ほんと」になれたら


◇◇◇


「ただいま!」

「…………うん」

 
 待ち侘びていたその言葉も、聞きたかった明るい声も、今の俺には恐ろしいもので。

 早く逃げなきゃ。そうしないと、咲凜にどう責められるか分からない。
 今までは何も言われなかったけど、今日はこれまでと違う可能性だってある。


 いつか咲凜を避けてしまってから、ずっとこんな調子だ。
 


「あのね、燐人くん、」
「………ごめん。俺、課題やらないと」

 あれもこれも、嘘ばっかり。
 本当は課題なんてとっくの昔に終わらせている。

 咲凜はいつ、俺の嘘に気づいてくれるんだろう。
 早く、早く俺のことなんて嫌いになって欲しい。