「久しぶりだね、咲凜」
「……エリック」
久しぶりに間近で見る瞳に宿るのは、焦り、不安、罪悪感──。
そこにかつてあった、僕への純粋な好意は少ししか読み取れない。
嫌われていたらどうしよう。何か咲凜を傷つけるようなこと…はしていないな。
最悪な想像が脳裏をよぎって、それを掻き消すように次々に言葉を放つ。
「会えて嬉しい」
「あの、」
「僕のことは気にしないで。最近忙しそうだから、余り無理しちゃ駄目だよ」
矢継ぎ早に注ぎ足されていくのは、全て僕の嘘偽りない本心。
自分が持ちうる最大限の優しさを渡そうとしてはいるが、咲凜からどう見えているかは分からない。
「待って、エリッ…」
「おやすみ、咲凜」
咲凜が発しようとした言葉の続きを聞くのが怖くて、彼女を魔法で眠らせてしまった。
こんな強引なやり方、僕らしくないな。
ちゃんと咲凜の話を聞いた上で行動すれば良かった。
余裕は一切なくて、どこまでも自分勝手で、なんて醜い。
かつての自分とは正反対で、受け入れるのはなかなか難しい。
でも、これが人間、なのだろうか。
初めて話した日と同じように僕の膝で眠る、愛しいお姫様にそっとキスをする。
「本当にごめんね」
僕はきっと、もう絵本の王子様には戻れない。



