いつか「ほんと」になれたら

「えーとね、学校の話!」

 僕が尋ねると、咲凜の表情はぱあ、と明るいものに変わる。もっと見ていたいし、咲凜の話を聞くのも好きだしで、いつからか咲凜より先に僕が話を促すようになっていた。

 
「あのね、今日はね、ともだちと遊んだの」
「へー、友達はどんな人なの?」

 珍しい。咲凜が友達の話をするなんて。

 元々咲凜は積極的に友達を作る方ではなかったけど、去年の一件以降ますますそれが加速してしまったみたいで、実は心配していた。
 
 
 だから、咲凜の友達はどういう人なのか気になって、少し身を乗り出す。
 
「めるちゃんとよもぎちゃんって言うんだけどね」

 友達のことを聞かれたことが余程嬉しかったのだろう。咲凜は、得意げな表情で話し始めた。
 

◇◇◇
 
「そっか、良かった…」
「どうして?」

 僕が思わず、安堵のため息をつくと咲凜はこてん、と首を傾げる。

 …可愛い。仕草も含めて、可愛いが大渋滞している。
 
 
「咲凜が頼れる相手が増えたから」
「……どういう意味?」
「例えば、咲凜が困っている時。本当は僕が助けてあげれたらいいんだけどね、この体じゃそうもいかないから」

 そう言いながら、思い出すのは去年のことだ。