いつか「ほんと」になれたら


 絵本をつかんでいるはずのわたしの手は、空を切る。
 まさかとは思いつつ机を確認すると、いつもの場所に絵本はなかった。
 
 どうしよう。とは言っても、わたしが頼る相手なんて限られている。
 
 

「燐人くん、助けて」
「……咲凜?」

 避けられても、懲りずにこうして頼ってしまうわたしは本当に馬鹿だと思う。
 部屋にまで押しかけて迷惑かもしれないけど、1番に思いついた相手が燐人くんだったんだから仕方ない。
 
「わたしの絵本が……え、それ」

 ドアを開けてくれた燐人くんが、手に持っていたのはわたしが探していたものだった。
 すごく驚いたけど、戸惑っているのは向こうも同じように見えた。

 
「あ……ごめん」
「大丈夫、気にしてないから!」
「どうして、」
 
 燐人くん自身に向けたであろう言葉が、空っぽの廊下に響くにつれ、その顔は歪んでいく。
 
 色々と思うことはあったけど、わたしは燐人くんを責める気分にはなれなかった。


 燐人くんの誰よりも傷ついた表情だけが、深く脳裏に焼きついた。