いつか「ほんと」になれたら


 わたしなりに推理してみながら、家の鍵を開ける。
 つい1年前までは、燐人くんがわざわざ鍵を開けるために玄関まで出て来てくれたのに。

 帰り道の途中で芽蕗ちゃんと艾葉ちゃんと立ち話をしているから、いつも、帰りはわたしの方が遅いのだ。

 
 出来るだけいつも通りの明るい声で、燐人くんに声をかける。
 
 
「ただいま!」
「…………うん」

  
 しばらく間を空けて返ってきた返事は、何もかもがそっけないもので。
 分かってはいた事だったけど、やっぱり寂しい。
 
 
「あのね、燐人くん、」
「………ごめん。俺、課題やらないと」
 
 
 寧ろ、わたしが話しかけるたびに、より一層避けられている気がする。
 燐人くんに限ってそんなことはないと思いたいけど、状況が状況だ。たぶん、いや間違いなく避けられている。


 なんで、こんなことになったんだろうな。
 
 大きなため息とともに、自分の部屋に逃げ込む。
 駄目だ、わたし。ほら、ため息を吐くとその分、幸せが逃げるって言うし。

 こんな時はエリックの顔が見たくなってしまう。でも、直接会いに行く勇気はなくて。
 代わりと言ったら失礼だけど、机の上に置いているあの絵本に手を伸ばす。
 
 
「……あれ?」