いつか「ほんと」になれたら

 エリックと会えたのに、何も話せずに眠ってしまった。
 そもそもわたしが寝落ちして夢を見ていたという経緯もあり、疲れきっていたのだろうか。

 会いに行けなかったことも、寝てしまったことも、本当に申し訳ない。

 
 わたしが疲れているのを見兼ねたエリックが、わたしを休ませてくれたのだという事実に気づくのはまだまだ先のことである。
 この頃は周りで色々なことがありすぎて、そこまで意識が回っていなかった。

 
 何を隠そう、エリックと話せなくなったのとは別に、もうひとつの大事件が起こっていたのだ。

 
 
 わたしが中学に入学してから、燐人くんの態度が冷たくなった。



 前までは血は繋がっていないものの、普通の兄妹みたいに仲良くしていた。

 なのに、今は氷の剣のような、鋭くとがった言葉を返される。


 エリックにそんな態度を取られるなら、まだ分かる。というか、当然だ。
 わたしは約束をいくつも破ったんだから。嫌われてしまったらとてつもなく悲しいが、そうなっても仕方ないことをした自覚はある。
 

 
 でも、燐人くんの件については、全く心当たりがない。何ひとつとして、嫌われるようなことはしていない。
 エリックのことを相談したりもしたけど、それは今までもやっていたことだ。
 
 嫌われるどころか、わたしからすれば、自ら望んでわたしの話を聞こうとしてくれていたように思う。
 燐人くんが実際にどう感じていたのかは分からないけど。


 
 もしもあるとするなら、燐人くんの変化はわたしとエリックの関係に変化があったのと同じくらいだった。だから、エリックが何か関係しているのかな。……いや、そんな訳ないか。