いつか「ほんと」になれたら


 何気ない話で笑っている瞬間にも、ふいに申し訳なさが押し寄せて胸がはち切れそうになったからというのもある。


 会いたい、とは思う。でも、わたしが会っちゃいけないとも思う。
 
 だって、わたしはエリックを避けた。
 今更どんな気持ちで布団に入ればいいのか分からない。
 何を話せばいいのかも分からない。


 顔を合わせると気まずいから、ますますわたしの睡眠時間は減っていった。


 学校の授業中も眠くなって、おかげで勉強は分からないところが増えていくばかりだ。
 そうすると、ワークを解き終わるスピードだって遅くなる。悪いこと尽くし、最悪な負のループだ。
 

 そんな毎日に疲れ切って、家の勉強机で寝落ちしてしまったある日。
 わたしは1か月ぶりにエリックとの夢を見た。
 
 
◇◇◇


「久しぶりだね、咲凜」
「……エリック」
  
 
 昔と変わらないように見えて、実は少しだけ柔らかくなった大好きな笑顔。
 いっそのこと、その表情のまんま、わたしを罵ってくれたらいいのに。


「会えて嬉しい」
「あの、」
「僕のことは気にしないで。最近忙しそうだから、余り無理しちゃ駄目だよ」

 紡ぎ出そうとした謝罪の言葉は、とびきり優しい嘘に遮られる。わたしが言おうとした謝罪の言葉に、彼は気づいていたのだろう。

 
「待って、エリッ…」
「おやすみ、咲凜」

 エリックは、そっとわたしの額に口付ける。
 触れた温もりと声を感じながら、そこでわたしの意識は途切れた。